SHABADA in ＮＹ

Lullaby Of Birdland

　４回目のNEW YORK ! 究極のSHABADAを求めて、madamはとうとう大胆にもひとりバカンスを挙行した。
テーマは、ゴージャス＆リラックス！
友人に気兼ねせず、心ゆくまで自分の趣味の世界に浸れるシアワセ〜！憧れのW.Aホテルに滞在し、高級老舗デパート内のディ＆スパで、エステを受けるというのが目的だ。
　さてさて、タイやヒラメの高級魚が舞い踊る、世界一のメガシティの竜宮城（老舗デパート）での舞踏会（高級エステ）に、オソレ多くも単独乱入したmadam。日本の一庶民代表、日本近海魚のmadamの、SHABADA体験はいかなるものやら〜？
madamがチラリと覗いた、セレブ的マダムな世界、New York篇！

ホテルで

　SHABADA宿泊先は、park ave.に面する老舗ホテル。
いかにも東洋人を圧倒するかのような豪華シャンデリアと、シンデレラがかぼちゃの馬車で乗り付けた、お城の舞踏会が開かれそうな階段が売り。季節はずれの格安航空券を手に入れ、ホテルも個人で直接予約を取る。これだと、旅行会社を通すのとほぼ同じrateでも、かなりゴージャスなホテルを選べるのだ。

　ひとり、ダブルの部屋を占領する、贅沢なシアワセ！しかもここは、NY!〆きりの催促の電話も、家事に煩わされることなく、下着姿であろうが、スッポンであろうが、誰に気兼ねすることもない。

　そう、madamは今や、大海に放たれた、一匹の小魚ナノヨ〜ン♪

　部屋のそこらに洋服を目いっぱいに脱ぎ散らかし、厚みが40センチはあるであろう、日本の押し入れふさぎにしかならない来客用座ぶとん（めでたい時用）のような大きなクッションが、3つも並ぶキングサイズのベッドの上に、思いっきりダイブ！
しばし、手足をバタつかせ、エラ呼吸で自由と開放感を吸い込んでみた。

。。。。埃くさい。。。（もしかしてカビのにおい？）

「こちらのひとはコレだから。。。」
「お布団、いつ干したのカシラ？」

　しかし、こんなところでマイ雑巾を取り出し、シンデレラ（主婦）に舞い戻る気はさらさらない。
そう、今日から数日間のmadamは、自由自在に異国の海を泳ぐ、そう、魔法のかかった人魚姫。時間もた〜っぷり！タイやヒラメなど高級魚が舞い踊る、竜宮城での舞踏会もこれからだし、そこにはきっと究極のSHABADA経験が待っているハズ。。。！！！

　気を取り直して辺りを見回す。

　部屋には、余程の旧家か成り金家庭にしかないであろう、巨大な金箔使いの仏壇のようなテレビ＆チェストキャビネットに、スカーレット・オハラのコート5着は作れそうな、ヴァランス付きの複雑柄の完全遮光カーテン、アンティークな調度品の数々。。。。
そうそう、うっすらたまった埃さえも風情の一部に違いないのサ、きっと！

　オ、そろそろバスも頃合だ。
一応洗面、バスルームは年季のはいった本物の大理石使用。
「ホホホ、やったね！」

　 。。。ところどころヒビが入っている。。。

　いやいや、これだけの老舗ホテル、全室メンテするのはそれは大変なことであろう。それにここに泊まりたいがゆえ、一番安い部屋をチョイスした東洋の名無しの小魚ごときには、そう、カビだろうが、ヒビだろうが、充分すぎるくらい充分なのかもしれない。

舞踏会の準備

　今回は恒例の観劇とは別に、なんてったって五番街はプラザホテル隣りの高級デパート９Ｆでのエステが目的なのだ。１週間前でも予約は簡単に取れた。

　一応英語はずっと勉強しているが、日本からの国際電話で万が一,意思の疎通が図れず「電話料金がかさむのではー？」ーという、突如もたげた主婦根性と安全をとって、語学堪能なお友達マダムに事前に千葉から予約を入れてもらったのだった。
メニューを問い、しかし一見の客としてfacialは怖いからと、とりあえず肩凝り解消目的で、スウェーデンマッサージとやらをお願いした。

　「NYでswedish?。。。。」

　まぁいい、深く考えるのはよそう。

　日本にだって銭湯、温泉、ゴエモン風呂、サウナ、クワハウス、ベビィバス、アーユルだってコリアだってタラソだっていろんなお国のメニューが溢れている。ましてやここは人種の坩堝のメッカ！
きっと、何でもアリィ〜に違いない！

　『土曜日の午後1時！』

カードNoを伝えて万全の体制を敷いたmadamであった。

いざ、竜宮城へ

　夏直前のマンハッタン！
摩天楼さえも白い陽炎に融けるかのような、暑い眩しい日だった。

　ところでweekendの五番街は、キャリア族が行き交う平日とは、全く様相が異なる。
世界の有名なブランドショップは、いかにも重そうな格子のシャッターや金属製の門で固く閉ざされ、鋪道にはH&M（日本のユニクロみたいなもの）のプラスチックバッグや、屋台foodを手にした、日本のコギャル顔負けの露出度の高い、ラテン系の人もやたら目につく。

　よくマダム向けのファッション雑誌に登場するハイクラスのセレブや本物のマダムたちは、やはり徒歩では五番街を闊歩したりしない（特に週末）ようだ。

　”奧ゆかしさ”とは、どの国のハイソサエティに共通の特性なのだろうか、決してたやすく庶民の前にその姿を現わさそうとはしない。万が一見つけても、気軽に声をかけたり、肩を叩いたりしてもいけないような、独特の雰囲気をお持ちなのも不思議だ。

　よって、もしチラリとでもそのお姿や生活を拝みたいと望む者には、春の小川、メダカの学校を覗く要領で、息をひそめるか、もしくは幾重にも張り巡らされた関門をクリアするという試練を与えられるそうな。
そうそう、竜宮城に辿り着く前にも、何層ものワカメのカーテンが用意されているのだ。

　目の前にそびえるは、いかつい石造りの城塞！
刻まれた金文字の、そのユダヤ系老舗デパート名が一瞬キラリと光り、東洋の小魚をせせら笑うかのようだ。通りの小さな小窓のショーウィンドウには、ゼロが4つか５つ（単位はもちろん＄）は並ぶ、ヴァンクリ、ピアジェ、ブルガリ。

　ほんの数個で日本のマンションがいくつも買えそうな宝飾品が。。。。

　「フ、フン！上等じゃないか！」

　この砦を突破するために、今日はmadamだって、用意周到な、完全武装の出で立ちで、臨んできたのサ！

　呼吸を整え、、、、、すわっ！

「いざっ、出陣！」

画像 : Tiffany North America店より

■第一のカーテン。。。(関所）

(ナンデ、1階が宝飾品売り場なんじゃァ〜！！！)

　黒いオニキスの壁面と、これまたきらびやかなシャンデリアの中に、ルパン3世がとびつきそうなシロモノが並ぶ。
お向かいのティファニーの1Fのように、旅行客が気軽にウインドウショッピングを楽しめる雰囲気では、決してない。

　まずは奧のエスカレータに辿り着くまでに、このケンランゴウカな乱反射に目を潰されないようホフク前進しよう。それができない場合は瞬時にしてふりだしにワープさせられ、一生カーテンの外（かやのそと）の存在の運命を甘受することになる。

■ 第二のカーテン。。。（関所）

　途中いくつかのファッションエリアを通過する。よく耳にするブランドが、それぞれスペースを構えているが、客はまばらというよりほとんど皆無。
それともセレブ族とは時に応じて、透明人間のごとく姿を消せる能力をも持つのか？ーとふと考え、だったら、しっぽの先でもつかんでやろうと、オソルオソル、足を踏み出してみる。

　なるほど耳に馴染みのブランドもところ変われば、かなり品揃えが違うようだ。ソワレとかイブニングドレスとか、アカデミー賞の受賞式に女優さんが着るようなドレスがズラ〜リ！

　ま、オスカーが無理だったら、ここのお得意さんたちは、1億ほどかけた豪華結婚披露宴を月に一度は開いているのかもしれない。そして、より経済力のあるダーリンを物色し、離婚歴も重ねている、、のかは定かではない。。

画像 : ヘレンドHP

■ 第三のカーテン。。。（関所）

　ヘレンド、マイセン、ウエッジウッド。。。
　madamは西欧のクラッシックなインテリアや調度品、食器の類いも、ダァ〜イ好き！おいしそうな料理が盛られていれば、狂喜乱舞。しかし、そのような凝った料理を自宅で作れるわけないので、結局は食器棚奥に大事に飾っておくことになる。
　きっとmadamの前世は、西欧の貴族クラスの高級魚だったに違いない（！？）と、しばし遠い記憶の蓋を無理矢理こじあけ、我れと値札を忘れ、思いっきり、尾ひれを動かして、フロアを泳いでみる。。。

　......泳ぐ、泳ぐ......

　ふと目にはいったのが、かわいく繊細なレリーフが施された陶製のスプーン置き（なんて言うンだっけ？コレ！）
この位ならゲットできるかなと、お値段を確かめたところ、なんとやはり７の次にゼロが２つ！！！

　ナンデ、箸置きごときのようなモノが、１個７万円（日本円）以上するんじゃぁ〜！？！

　あまりの不条理に、思わずカチャリと音をたててしまったmadam に、すかさず目を光らせ走り寄ってきた店員。

「ノープロブレム！」

　何ごともなかったかのように余裕の笑みをかましたmadamであったが、
その時はじめて気付いたコトがあった。

『。。。どうも、一挙手一投足監視されているらしい。。。。』　

　そう、自由とはカクもムズカシイもの。領海権を犯してしまった日本近海の小魚の、当然の運命なのか？ そして、

『大海という海は、もはや地球上のどこの世界にも存在しない』

ーという真実に辿り着くのももうすぐなのであった。。。。

舞踏会場（目的の最上階）

　途中、エスカレーターが途絶え、エレベーターに乗り換える。初老の見るからに温厚な店員madamが乗り場まで案内してくれた。

　しかし、ここのエレベーターは、かなりのろいゾ！
最上階のヘアーサロン目的のお客が、階下の場内とはうってかわったように湧いてくる湧いている..........
身だしなみに余念のない慌ただしい生っ粋のニューヨーカーで溢れるヘアーサロンを尻目に、フロアーの奧の奧にある今回予約したday&spaへと向かう。

扉の向こうの異空間.....！

　これぞ究極のSHABADAなるものか?!?
madam好みのけだるくなるような色使いと、アラバスタの間接照明、一瞬にして全身弛緩に誘なう

アロマの香り......！

　求めていた桃源郷にやっと辿りつけたという安堵感と、緊張がおりまざった不思議な感覚！
名を告げると、フロントの長身の紳士の案内で、担当者の希望を問われる。

「女性か男性か、どっちを好むか？」。。。。

　実はmadam、エステシャンは女性しか経験がない。
しかも今回はbodyのみだしィー、、、、（今さらながらの、は・じ・ら・い）

でも男性の方が力があってよいかな？とか、
若いniceな、それこそブラピのような男性だったら
ヤクトクだなァ〜とか、
イヤ、しかし、世の中そんな甘くないぞ、
その逆のパターンも考えられる、

ーなどと,madamお得意の豊富な人生経験に基づく深い洞察と分別との間（ハザマ）でしばし想いは逡巡したが、やはり最初のはじらいに忠実に女性の方にお願いした。

　上下白の整体師そのものの白衣の、地味めの髪をうしろに束ねた女性に導かれ奧の個室に案内される。
（ところで、こちらはNYでもヒーリング系の草分け的day&spaとのフレコミリフレクソロジーや指圧マッサージなんかもあり）

画像 : 観光地湖南

　ここの個室は、日本の高級エステサロンと比べとても、贅沢な部類に入る広さだ。　

〜さすがamerican size!〜♪

　壁面の圧迫感もなく、いいジャーン？　
と思った時、突然服を全部脱いで真っ裸になれとの、

mission impossible！！

「What did you say？Should I take off all......How about shorts?」

『Sure ! madam』

そりゃあトリートメント受けるためにはパンツの一枚や二枚脱ぐことはやぶさかではないが、「日本ではふつー、あのォー、代わりの紙パンツとか。。。。」ーという間もなく、madamは　突然

　left alone.......

　しぶしぶ服を一枚ずつ脱ぎはじめる。
しかし、どうにかパンツまで脱いだはいいが、脱衣籠が見当たらない。。。

　「どこにおけっっていうんだよー！！ふつーはさ（日本の場合）、せめて脱衣用のバスケットとかァ、アクセサリー類はフロントで預かってくれるとかァ、最悪でも鍵付きのロッカーとかハンガーとかァ。。。。。！！」

　仕方なくそこらの丸椅子に完全武装してきた服と下着を幾重にもまるめ、備え付けの小さな洗面台の隅っこにアクセサリー類をソッと置く。

。。。こちらの常連さんたちは不都合を感じないのだろうか？。。。。

　それともmadamが日本近海産小魚ゆえの扱いなのか？アトランティックオーシャン産の大型魚は、洋服やアクセサリー類を、無造作にそこらに置くことに抵抗はないのだろうか？

　「あまり待たせると寒いぞ、オイ、せめて毛布かバスタオルくらい欲しいぞ」
。。。。。。。。。。。（沈黙）

　それにしてもついさっきまで五番街仕様の完全武装で何重もの関所をくぐり抜け、いやその少し前は週末で賑わう表通りをさまざまな出自の魚たちとフリーセッションを楽しみ。。。。。（沈黙）

えっと、この後は
確か3時から7th ave.の劇場で。。。。。（沈黙）

。。。。。。。。。。。。。。。。。（沈黙）

トコロデサ！

『何故、自分が、こんな、よその国の、知らない場所で

土曜の真昼間、

誰もいない、薄暗い部屋で、ただひとり、

しかも、真っ裸でいるんだろう？？？』

（Who am I? Where is here? Why am I?)

ワタシハダレ？ココハドコ？ナゼウマレテキタノ？

　泡沫のごとく沸き上がるさまざまな自問の果てにとうとう人類普遍の、究極の真理を穿つ疑問に辿りついたmadamは、やっと本来の落ち着きを取り戻し、真っ白なシーツのベッドの上、おのずと裸体のマハのポーズを決めてみる。

ーとまもなく、ノックの音！！

王子サマ。。。。？

めくるめく究極のSHABADAを期待して辿り着いた舞踏会、マチニマッタ、ご対面のその時がついに来た！

『マナイタノ。。。。。』
（まな板の、、、、、）

madamは静かに目を閉じた。

鯉もよかろう。。。　
日本を代表するりっぱな高級魚だ.（食べられるし。。。）』

そう　どこの海でも、魚はいづれ釣り上げられるのが宿命。

究極のSHABADAとは

『我をはなれ、
されるがまま為すがままに、
我が身を流れにゆだねることよ〜』

新たにまたひとつ、SHABADAの真理に到達したmadamは、

ー白い衣装の王子さま（施術師）がせめて女性だったこと！ー 我が身の直感（ハジライ）の正しさにイタく感動しながらおとなしく何枚かにおろされていくのであった。

。。。アゥアゥアゥ。。。

madam SHABADAのObasan-館 > Essay > SHABADA in NY